言葉を話すようになったけれど、言える単語が増えない。動詞は全てわんわん、乗り物はぶーぶーと言う。その理由を言語獲得のプロセスと共同注意の側面から解説します。
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言葉の獲得と増え方
−言葉は増えるのではなく分かれていく
−自分で気付き分けていく力が必要
−言葉が増えにくい子どもの特徴
言葉を増やすための関わり
−同じ・違うを分けてみよう
−仲間どうしで分けてみよう
言葉は増えるのではなく分かれていく
子どもが新たな言葉に出会ったとき、目に見えた情報と耳で聞こえた情報を合わせて紐づけ、言葉を獲得していきます。
これを繰り返して言える言葉は増えていきますが、全ての言葉を1つ1つ見て聞いて紐づけている訳ではありません。言葉の覚え始めでは色々な意味をひっくるめて1つの単語を使うことがよくあり、これを過大汎用といいます。そして覚えた言葉から意味や概念を深めて新たな単語へ分かれていきます。
過大汎用の例としてよく「わんわん」が挙げられます。
※イラストはAIで作成しています。登場人物の雰囲気が少々変わりますが同一人物と思ってご覧ください。
この時、子どもは「わんわん」という音声を見た情報と繋げます。
4本足で毛が生えていてしっぽがある動くものを「わんわん」と覚えるでしょう。
そして猫を見ても「わんわん」といいます。
しかし母に教えてもらい、4本足で毛が生えていてしっぽがある動くものでにゃーとなくものは「にゃーにゃー」と「わんわん」から概念が分かれます。
そしてうさぎを見てさらに4本足で毛が生えていてしっぽがある動くもので耳が長いものは「ぴょんぴょん」と概念が分かれます。
自分で気づき分けていく力が必要
しかし全てを丁寧に教えてもらい獲得できる訳ではありません。
① ②
これらの様に日常の生活の中で自然と見たり聞いたりしている事から、その音声が何を示しているのかを考える力が必要です。①であれば「母と一緒にテレビに注目する」力、②であれば「母の視線を見て追いその視線が指し示している物を捉える」力が必要です。そしてこれはどちらも共同注意のスキルです。
言葉が増えにくい子どもの特徴
言葉の獲得や言葉を分けて捉える過程で共同注意のスキルが必要であると説明しました。それでは、言葉を話し始めてなかなか言葉が増えない子どもや言葉の話し始めが遅い子どもがいるのはなぜなのか。
これは共同注意の苦手さが原因の可能性が考えられます。前述の様に物を相手と共有することや相手の視線を追って物を捉える力ももちろんですが、生活の中で自分の表現が伝わらなかったとき「違う言い方かな」と気付くことが重要です。『伝わらなかった経験』『違う表現で伝わった経験』これを繰り返して過大汎用された言葉は分かれていくため、同じ物を共有して認識する力や相手の顔を凝視して思いを確認し共有する力などの共同注意スキルが重要となってきます。
生活の中で自分の力で気づき言葉を分けていくことが大切ですが、それが難しい子どもとは一緒に練習をすることもあります。
同じ・違うを分けてみよう
まずは2つのものが「同じ」か「違う」かを分けてみます。
丸いスイカと丸いメロン、見た目は似ているけどこれは違う。丸いスイカと切ったスイカ、見た目は違うけどこれは同じ。
このようにものを見て同じと違うを判断することは、同じ名前で言ってた物が違うものだ!と気がつくきっかけになります。
仲間どうしで分けてみよう
いわゆるカテゴリー分類の課題です。[乗り物・食べ物・動物]の様な大きなカテゴリーの言葉を分ける事も大切ですが、より細かなカテゴリーを理解することで、頭の中の言葉を整理したり、過大汎用していた似たカテゴリーの言葉を分けるきっかけになります。
例えば、お店屋さんづくりで沢山の商品を各お店に正しく分けて並べます。食べ物を沢山用意して[レストラン、八百屋さん、ケーキ屋さん、パン屋さん]など。そのあとお店屋さんごっこで注文されたものと同じ商品を渡す。
こんな風に遊びの中で物をカテゴリーで分ける、同じ物を探す、違うものを見つける練習をしてみましょう!