言葉を話すようになり、2語文、3語文が増えてきたけれど動詞がなかなか増えない。その理由を見る力(共同注意・視覚認知)の側面から考え解説します。
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動詞が増えにくいのはなぜ?
−動詞は物体として存在しない
−同じ意味でも違う言い方になる
動詞の獲得を促す関わり
−オノマトペと一緒に動詞に触れる
−動詞を使った文に繰り返し触れる
−実際に体を動かし動きと共に動詞に触れる
−文から動詞を見つけ出す
−見る力を育む
私たちは生活の中で新しい言葉に出会ったとき、その場の状況や話した相手の視線を追って「あれのことか」と気付き、音声に意味付けをします。初めは色々な意味をひっくるめて過大汎用している単語が意味で分かれるときも、1つ1つ教えて貰うのではなく、会話の中で共同注意のスキルを使って自分で気付き習得しています。
※ここまでの内容を詳しく知りたい方は関連記事へ
「する」「やる」は動詞の過大汎用と言えます。名称を覚えるとき同様に「する」「やる」から[お絵かきする→絵を描く][テレビする→テレビを見る]と分かれて増えていきます。
同じ意味でも違う言い方をする
動詞の特徴として活用があります。つまり、同じ意味でもそれを使う状況によって言い方が変わるのです。そのため、過大汎用されながら覚えた言葉は「分ける」だけではなく、違う音声だけれども同じ意味を示している事に気付く必要があり、より複雑になっています。
例)椅子に座る
カードなどで「座る」が選べても生活の中では「座りましょう」「座ってね」「座りなさい」「座って」など様々な言葉に変わります。子どもは毎回新たな音声に出会い獲得していきますが、その過程の中で状況の理解や他者理解という、より高い共同注意のスキルを使ってと知識をまとめる必要があります。
英語の文法と活用ってシンプルですよね。臨床で出会う子どもの中には日本語より英語のほうが指示が通りやすいんです!なんて子もいます。
動詞は物体として存在しない
動詞とは動きを表す言葉であるため、具象化して現しにくいという特徴があります。そのため絵や写真でイメージを持つことが難しく、生活の中で見る力が重要です。その場の状況を見てどこからどこまでの動きを示しているのか理解し(視覚的洞察)、音声と紐付けて習得する必要があります。また同じ動きでも使用している物で表現が変わったり(形態認知)、使用している物が動く場合は視線を動かし追う必要がある(空間認知)など、物の意味概念を理解したり経時的・空間的に物事を捉える視覚認知の力が必要となります。
例)口に物を入れる動作=「食べる」と覚えても口に入れるものによって食べ物以外であれば「咥える」、飲み物であれば「飲む」と変化します。
また、ボールを投げる時にはその場だけではなくボールの行方を追う必要があります。
オノマトペと一緒に動詞に触れる
オノマトペは幼児語としてもよく使用されるように、イメージしやすいのです。ハサミはチョキチョキ、ご飯はパクパクなどイメージがしやすいオノマトペを動詞の前に付けると良いでしょう。
動詞を使った文に繰り返し触れる
動作を表すカードなどを使用して「〇〇が〜(動詞)」という文を聞いて知ります。子どもの身近にある動作の言葉から始めてみましょう。この時[走る・跳ぶ」など物を使わない動作より「食べる・切る」の様な物の操作を示す動詞のほうがより分かりやすいでしょう。また、「服を着る・脱ぐ」の様な経時的変化の把握が必要なものは静止画で示しにくいため難しい可能性があります。
体を動かし動きと共に動詞に触れる
動詞は動きを表す言葉です。特に動詞が増えにくい子どもは前述の通り生活の中で言葉を習得するために見る力が弱いことや、カードで覚えた言葉を状況に応じて分けたりまとめたりする力が弱いことが考えられるため、実際に自分で動いて体験しながら言葉を覚えられるよう、体を動かしながら言葉に触れてみましょう。
文から動詞を見つけ出す
年齢を重ねて、文字を習得したり絵本など少し長い文章に触れることができるようになった子どもにおすすめです。文章の中から「動きの言葉」を探して印をつけてみましょう。探した言葉を使って体を動かす遊びをしたり、別の文を作ったりするとより理解が深まるでしょう。
見る力を育む
直接的に動詞に触れる練習ではありませんが言葉の発達の土台を作るためにとっても大切。場面を空間的に捉えられるようパズルや積み木など構成遊びを取り入れたり、間違い探しなどで認識できる視野を広げられると良いでしょう。
具体的な関わり方の例は関連記事からご覧ください。